2/17 公開シンポジウム「セクシュアル・マイノリティと心の悩み」報告

2013年2月19日

つながれっとNAGOYAの委託を受けPROUD LIFEが2/17(日)に実施したシンポジウムのご報告です。

 

皆さんはこの題名を聞いて、どのような内容だと想像しますか?

『セクシュアル・マイノリティ特有の心の悩みについての詳細の解説かな?』と思われるのではないでしょうか。

 

本日のシンポジウムは、そのことについてはもちろんのこと

『現状、性の多様性に対応していない社会であるからこそ、セクシュアル・マイノリティが生きづらく、ゆえに、心の悩みを抱えやすい』

『では、どのようにしていくか』

ということに重点の置かれたシンポジウムとなりました。

 

開会挨拶 PROUD LIFE理事 安間優希より、シンポジウム開催の経緯と当事者支援の現状報告で、シンポジウムは幕を開けました。

1yuki

まず、平田俊明さんの基調講演。

当事者が抱えるメンタルヘルスの現状解説として、様々なデータや当事者から寄せられた声が例示されました。

2hirata

メンタルヘルスを害する主要因の一つに『自尊感情の低さ』があり、そのベースを作り上げる幼少期・成長期の環境、という視点からから、それがいかに当事者にとって厳しい現状であるかを解説いただきました。

具体的には、子供にとってはそこが全てと言っても過言ではない、学校及び家庭で、いかに性の多様性が教育・認識されていないか、ということです。

学校においては、児童・生徒への教育不足によるからかい、及び教師の認識不足からくる偏見的な言動を例示いただき、性の多様性を教育することの重要性が強調されました。

家庭においては、学校同様のことが家族、特に親から行われることが挙げられ、また、セクシュアル・マイノリティ当事者の特殊性として、例えば同じマイノリティであっても親子が同じ問題を抱えている場合、家庭では親が子をそうした偏見から守ろうとするだろうが、セクシュアル・マイノリティの場合はそういったことが行われる確率は極めて低いであろうという指摘が印象的でした。

 

基調講演の後、渡辺大輔さんとすぎむらなおみさんから報告がありました。

 

まずは渡辺さんから。

人権教育における位置づけで当事者を支援することが重要であるが、現状、学習指導要領には多様な性に関する記述はない、との報告から始まりました。

3watanabe

国際的には性の多様性に関する教育の重要性が主張されているのにもかかわらず、日本においては、例えば中学校で性教育として「さまざまな性」に取り組んでいるのはわずか数%である、という比較説明がありました。また、同性愛については、学校現場での実態においては「一切習っていない」が8割弱、「肯定的な情報」を得た、は、わずか数%であるという報告がありました。

その他、中学校での実践例として、友人がLGBTであったらどうするか、というDVDを視聴し、生徒の反応を見る、ということが挙げられました。いわゆるマジョリティにとっては、自分がそもそも『異性愛』であることを知らない、という言葉が印象的でした。

最後に2007年文部科学省心のノート(中学校)『好きな異性がいるのは自然』という項目の紹介があり、思春期の当事者にとっての影響が非常に懸念されるとの示唆がありました。

 

続いてすぎむらさん。

性の多様性に関する授業の時間がなかなか取れない現状で、保健室にレインボーフラッグなどの”なにげグッズ”を置き生徒の反応から話を広げるという工夫をされています。

4sugimura

養護教員として日々実践されている現状報告、そして生徒にどのように対応すべきか、という内容でした。

当事者は心を開くのに非常に時間がかかりじっくり取り組む必要があること、過去に接した生徒に対し、セクマイではなかっただろうかと想像すること、教育現場では性の多様性に対する教師同士/生徒同士の解釈でもぶつかりがあることが挙げられました。

そのような問題提示の後、最後に、”正しい”在り方として、その人自身を肯定することの必要性が訴えられました。

 

休憩をはさみ、質疑応答。非常に多数の質問が寄せられました。

5

限られた時間で少ししかご紹介できませんでしたが、上記を補足する非常に貴重な意見が出ました。

 

来場者からのたくさんのアンケートも寄せられ、シンポジウム後、お三方にもご覧いただきました。PROUD LIFEとしても、今後の参考にさせていただきます。

 

改めまして、平田俊明さん、渡辺大輔さん、すぎむらなおみさん、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。